駅前はいつもすこしだけ涼しい

地元が欲しかったなあ、などと思う。


欲しいものがすぐ手に入るのは便利だけれど、同時にかなり寂しくもあって、
いつだって他人との距離は遠かった、くらしの感覚。
もどかしい思いや、気合を入れずにゆっくり歩くということ、
ちゃんと、骨として形成できたら良かったなあ、と思うのね、
わたしだって、
鳥や虫の鳴き声を、肌馴染みがいいという理由で愛したかったし、
制服のまま川に飛び込んで泥んこになりたかったし、
畦道を二人乗りの自転車で爆走したかった。

変わり目の匂いが、しない。
予定になかった早めの夏ほど、苦い季節はない。
関節をつなぐ紐が解かれてしまったようにソワソワして、
体が重くって、
目覚めるたびに、頭を鈍器で殴られたみたいな衝撃。
鎮痛剤を飲んで、まやかしを許容する。
やはり、夏が始まったらしい。

向上心を煽る山より、深く飲み込んでくれる海。


あちこちに丁寧に散らかっている本と衣服、
起きたままのベッド、
帰って眠るだけの家。

底抜けに明るいものは、どうも苦手でむず痒い、
だけど愛おしくて、嫌になっちゃうね、

 

小指の先を辿ったら、爪先に辿り着いたらいいな。
早まるな、は、所詮ピュアなエゴ。
だったら心中なのね、いつだって。

蹴散らせ〜!

 

就職について、
いいえ、
うつくしい収束について、
あるいは、
終息について、
思いを馳せております。

 

決して馬鹿にしているわけではなく、
きみには一生わからないよ、と言いたいのです。

大きな期待と愛を込めて。

 

きっと、ぼくたちはもっと、
恋の話をしないといけない。