夏ですか
脳裏に焼き付いた黄金虫。
湿った地面にひっくり返って手足をじたばた動かしている。
小枝ないしは木の葉を拾って彼を掬って、救って、
その完璧な映像だけを、悲しいかな、鮮明に見た。
その瞬間の身体はというと、あまりに無力だった。
踏み潰さないように、そっと、除けて、
けしからん。
こんなにも憎くて憎くて、いとおしい。
どうして!
失敗したソフトクリームに芸術点を見出されちゃあ困るのね、
女子高生、スカートとポニーテールを揺らしながら、
「すげえ〜」と言わんでよ、違うんです。
違うんです。
ただただニッチな不器用で、甘ったるいピサの斜塔が。
甘ったるいのって良いな、
どうしようもなく許されるアナーキーな夏!
どうしようもなく許されたいが、浅はかな愛だとしたら頼りたくない。
生きるのが下手なのね、
わたしが悲しみに耐えることよりも、
誰かを悲しませることの方が、正直、よっぽど、痛いな。
好きになりたい、を、何度繰り返したことだろう。
いっそのこと、狙い撃ちで死んじゃえば?
一緒に島へ行こうとか、それくらいの純度で。
わ
た ← ドドドドドド
し
ライフルがいいな〜〜!
タガメを捌いたときのことを思い出した。
解体新書がついていて、その通りに、鋏を入れた。
鼻毛切りくらいの華奢さの、鋭い鋏。
ひっくり返して、手足の間から。
タガメの肉、ツナみたいな食感だったけど、無味だったのね、
無味なのに、青林檎の香りがして、味覚と嗅覚が究極に乖離した。
スキンヘッドの店長が「ラッキーだね」と言ったのね、
人間にも、わかりやすい共通認識としてのフェロモンがあったなら、
あったなら、
単純になっては詰まらないけれど、単純を羨んでしまうことがあります。
〜タガメの場合〜
いい男は青林檎の匂い。
〜わたしの場合〜
踊る鰹節が見たい。
月が綺麗なとき、
口に出すこと自体、或いは口に出してしまったあと
少し気恥ずかしいのは、してやられた感じがあって気に食いません。
他意はなく、ただただ、月が綺麗と言いたいよね。