メモリー、有機的栽培

店長という生き物は、お店に住み着いているのかもしれない。

たたずまい
佇まい
立たず舞い
絶たずまい

やはり、事実をそのまま綴ったところで本物には勝てやしないのね、
読む側にしたって、本物を見たほうが何倍も良いに決まっているのだから。
そうね、
果たしてそうかしら、
有機的なものであるからこそ、文学は面白い。

FARCEに就て

 

単純を羨むことは、嫌味?
わたしときみの事実は如何なるときも違うわけであるので、
何を言ったとて嘘にはなりません。
で、あれば、
たった今すれ違った人の服装を覚えているか、
たとえばそんな話でしょう。
視界が鈍角、
もしくは直線、
言葉は球、
で、あれば、
ただ、成る程、と思うだけでしょう。

「好きそう」って、当たっていても外れていても
少し複雑な気持ちになるのね、
何とも絶妙な、空気。
わたしたちって、かわいいね。

「似ている」も、少し寂しくなるのです。
誰かにとって大事な誰かの面影を辿って生きられること、
幸せだとしてしまえばそれまでなのだけれど、
そうはいかないのね、
わたしは我が儘なので。

 

ときめきをiPhoneに残すと、
いとも簡単にメモリが埋まってしまうね〜?

諸行無常って、
間隙を縫ったとて抗えないものなのですか?
魂は歳を取らなくても、彼の眉毛には白髪が
う、くやしい、だめ
ぜんぶ吸い取って一文無しにしてあげよっかな

無理か〜〜〜、

 

愛だよ!

 

世の中、気をつけなければならないことが多すぎて、
そこに、
気をつけると気を遣うの違いに就て考えてみたい、と、
口を挟んできた彼女のことが、
ほんのちょっと、気になりました。

言葉が溢れて止まらないので、
通話を保留にしてこの文章を綴っていること、
忘れたくない。
忘れたくないという気持ちは、
忘れてしまうからあるもので、
そこにジレンマが生じることが、
何とも美しいと感じます。
もう浴びることのできないあの声は、
ある一定数の中で永遠に恋しいということが決まっていて、
どうしようもなく狡い。

 

MOON HOROSCOPE☆

8月は、以前まいた種が芽を出す暗示、
だって。
ずいぶん前にまいた種でも、
だって。
しかもね、
ここで出た芽は大きく成長するから意欲的に取り組め、
って言うのね。
種なんてまきすぎて、
何処にまいたかも何故まいたかも何をまいたかも、
すっかり忘れてしまったよ〜〜、もう。

心の奥のたいせつなメモリー
農薬もかけていないし、害虫駆除も、特にしなかったな
心配なのは、気づかれず月日が経ってしまったことだけ
踏み荒らされていないといいなあ、

 

あ、ちなみに山羊座ね。

 

柔らかいごはんつぶの味

ひかりに透けると、触れたくなる

 

背の高さに、とくに不満を持ったことはない
寧ろ、武器がよく似合うであろうから、お気に入り
だけど、
手を伸ばせば何だって届いてしまうことを知っているから、
涼しい顔をして、好きなものを最初に食べる
何にしろ、一口めって、いちばん美味しいよね

いろんな食べ物を、一口ずつだけなら、
ずっと食べ続けていられそう
なるべく大きな回転テーブルを満ち満ちにしようね
でもあれって、タイミングを窺わなくちゃいけないから
息の仕方を忘れそうで、ちょっとだけ、こわいのね
せーので回そうか
回しすぎて喧嘩にならないように、
ほんの数センチずつの約束で

あ〜
緊張が解れた頃合いを見て、
ショートケーキを丸ごと口に突っ込んであげたいよ〜
問答無用の手掴みで
だから、おねがい
茶店では向かいに座ってね

 

却説

 

柔らかい髪色が似合う女の子に生まれたかった、

思ったことはないけれど
一度なってみたい、

思うのね
追いかけたってわたしはあんたにはなれないから

あの子は言っていたけれど
わたしはずっと、
ずっとね、
蒸した栗色をしたきみの髪の毛が
ひかりを吸収するのを斜め後ろから見ていたのだよ
わたしの瞳は日焼けしやすいから
ときどき、目を逸らしてしまったこと、
謝れないまま大人になったな

 

あの子はわたしに当然なれないし
わたしもあの子に当然なれない
そんな公式は世の常だけど
あの子だってわたし「みたいに」はなれるし
わたしだってあの子「みたいに」はなれるのだよ
なってみたらいいのよね、一度くらい
そして、諦観しましょう
教えてくれるよ、きみ自身のこと

 

憧れは執着で、
好意よりもっと手軽だから恐ろしい

憧憬に殺されて、
スーパーマーケットのBGM、
お惣菜コーナーで凍死しようと佇んだ
売り場地図のフォトグラフィックメモリー

却説

 

ねえ、わんちゃん
わたしが投げた骨を
いつまで追い掛けるつもりなのですか
そんなに遠くまでいっていないはずでしょう
もう、ないのよ
すぐに風化してしまうものなのよ
わたしが投げた骨だけを
いつまでも追い掛けなくたっていいのですよ
転がっている他の骨を
あたかもあの時投げた骨かのように
咥えてきてもよかったのよ
わたしが投げた骨しか
咥えられなくなってしまったのね
愛の力?
いいえ、

グッピーが浮かんでいましたね
水槽に
わたしは怖くって
とてもじゃないけど近づけず
わんちゃん、
きみを走らせたね
マジックリーフの上で眠っていたよ、
だいじょうぶ
そう教えてくれたけど
シャッターを切らない限り
全てのものは改竄できるのね
でも、
あんなにも真っ直ぐな目を
はじめて見たから
それでよかった

大船のセブンイレブン近くの駐車場で聴いた
鼓膜を弾くみたいな大きな銃声は
誰かの死をわたしの記憶に刻んで
知らない誰かが亡くなったことだけを知った
死はいつだって生きている側のものだから
なるべく体温を確かめ合っていようね

却説

 

ひかりに透かして、触れる口実をつくらないで

 

肌にまとわりつくから

忙しない日々の途中で
いとしさを一欠片も失くしてしまわないように
下を向いて歩いた
とかげを二匹、踏まずに済んだのね
これは今日のはなし

きらめくのは知り得ない終わり
例えば明日すべてが消えちゃうとして
遺したわたしは朧げで
自信喪失したきみの今の基盤が
しばらくは不本意な自信になる
計算され尽くした当然の多幸感で
末路、感情を放置しないように

 

そういえば、18になりたてのころ
はじめてプロポーズをされたのね
「きみとなら一生一緒にいたいと思える」

空腹だったわたしには
目の前にした婚約指輪が
きらきらのドーナツに見えて
飛びついてしまいたくなった

いかん、いかん

腹が減っては戦はできぬ
妙に細長い彼の部屋を蟹歩きで移動して
冷蔵庫のなか
賞味期限ぎりぎりのヨーグルトを食べた
台所の隅
アルミホイル、てづくりの灰皿があって
わたしが咽せると
決まって灰が舞ったのね

腹が満たされたわたしは
薄暗い室内に干されたシャツに
ぽつん
てんとう虫を窓から逃した

あのひとは、
仕事をやめて実家に戻った

何度も何度も恋文がとどいた
わたしはそのたびに、
「そろそろ誰かと結婚しても良い頃なのにね」
なんて
他人事のように

 

しあわせに
形を与えないで
誰にも見つかりたくはなかった
かなしみは
目に見える形で
誰かに見つけてほしかった
みらいは怖いから
後ろ向きで進んでいたのね
遅いし、振り向いても眩しくはないよ
でも
怖くたって進まなくちゃいけないのね
だから
ゆっくり、ゆっくり
それでよかった

 

そう、
だからね、
写真も小説も音楽も
あったかくてちいさないのちも
ほんとうに好きなのね
全部わたしのなかで
誰にも見つからずにきらきらと
脈を打つ部分がある

知れることも好き
知性を以て色気と魅力は成されるのね
脳味噌だけでも
ずっと素敵でいたいな

好きなもの
感性
すべて後天的で
血も容姿も関係ない
毅然としてニュートラルで
わたしを肯定も否定もしない

脳味噌に
たくさん詰め込んでしにたい

夏の風が吹きました

いつになるかもわからない
人生二度目のプロポーズのことを
なんとなく想います

 

 

 

駅前はいつもすこしだけ涼しい

地元が欲しかったなあ、などと思う。


欲しいものがすぐ手に入るのは便利だけれど、同時にかなり寂しくもあって、
いつだって他人との距離は遠かった、くらしの感覚。
もどかしい思いや、気合を入れずにゆっくり歩くということ、
ちゃんと、骨として形成できたら良かったなあ、と思うのね、
わたしだって、
鳥や虫の鳴き声を、肌馴染みがいいという理由で愛したかったし、
制服のまま川に飛び込んで泥んこになりたかったし、
畦道を二人乗りの自転車で爆走したかった。

変わり目の匂いが、しない。
予定になかった早めの夏ほど、苦い季節はない。
関節をつなぐ紐が解かれてしまったようにソワソワして、
体が重くって、
目覚めるたびに、頭を鈍器で殴られたみたいな衝撃。
鎮痛剤を飲んで、まやかしを許容する。
やはり、夏が始まったらしい。

向上心を煽る山より、深く飲み込んでくれる海。


あちこちに丁寧に散らかっている本と衣服、
起きたままのベッド、
帰って眠るだけの家。

底抜けに明るいものは、どうも苦手でむず痒い、
だけど愛おしくて、嫌になっちゃうね、

 

小指の先を辿ったら、爪先に辿り着いたらいいな。
早まるな、は、所詮ピュアなエゴ。
だったら心中なのね、いつだって。

蹴散らせ〜!

 

就職について、
いいえ、
うつくしい収束について、
あるいは、
終息について、
思いを馳せております。

 

決して馬鹿にしているわけではなく、
きみには一生わからないよ、と言いたいのです。

大きな期待と愛を込めて。

 

きっと、ぼくたちはもっと、
恋の話をしないといけない。

夏ですか

脳裏に焼き付いた黄金虫。
湿った地面にひっくり返って手足をじたばた動かしている。
小枝ないしは木の葉を拾って彼を掬って、救って、
その完璧な映像だけを、悲しいかな、鮮明に見た。
その瞬間の身体はというと、あまりに無力だった。
踏み潰さないように、そっと、除けて、
けしからん。
こんなにも憎くて憎くて、いとおしい。

 

どうして!

 

失敗したソフトクリームに芸術点を見出されちゃあ困るのね、
女子高生、スカートとポニーテールを揺らしながら、
「すげえ〜」と言わんでよ、違うんです。
違うんです。
ただただニッチな不器用で、甘ったるいピサの斜塔が。

甘ったるいのって良いな、

どうしようもなく許されるアナーキーな夏!

どうしようもなく許されたいが、浅はかな愛だとしたら頼りたくない。
生きるのが下手なのね、


わたしが悲しみに耐えることよりも、
誰かを悲しませることの方が、正直、よっぽど、痛いな。

好きになりたい、を、何度繰り返したことだろう。
いっそのこと、狙い撃ちで死んじゃえば?
一緒に島へ行こうとか、それくらいの純度で。

 

た   ← ドドドドドド

 

ライフルがいいな〜〜!

 

タガメを捌いたときのことを思い出した。
解体新書がついていて、その通りに、鋏を入れた。
鼻毛切りくらいの華奢さの、鋭い鋏。
ひっくり返して、手足の間から。

タガメの肉、ツナみたいな食感だったけど、無味だったのね、
無味なのに、青林檎の香りがして、味覚と嗅覚が究極に乖離した。
スキンヘッドの店長が「ラッキーだね」と言ったのね、
人間にも、わかりやすい共通認識としてのフェロモンがあったなら、
あったなら、
単純になっては詰まらないけれど、単純を羨んでしまうことがあります。

 

タガメの場合〜

いい男は青林檎の匂い。

 

〜わたしの場合〜

踊る鰹節が見たい。

 

月が綺麗なとき、
口に出すこと自体、或いは口に出してしまったあと
少し気恥ずかしいのは、してやられた感じがあって気に食いません。

他意はなく、ただただ、月が綺麗と言いたいよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

くたばれ、ラブリーに

あの子は、悲しくなくても泣いていた。

たくさん水を飲むから。

 

わたしは、

 

失うものも、欲しいものも、なあんにもなかったもんな、
特別な人に特別だと言ってしまえないのが、かなりもどかしくて鬱陶しいけれど、それがもう特別ってことなんだろうな〜。

 

かわいく泣けない、

 

本当にあの子が女の子だったのか、覚えていない。

柔らかくて透き通った肌に蚊が止まって、それを、二人で眺めた、

無性に焼き鳥が食べたかった、悔しいけど、いつだって空腹だけが記憶を呼び起こすのね、

「血ぃ、吸われてるって感じ、する?」

わたしが聞くと、あの子は笑って首を振って、

「血ぃ、有り余るほどあるのはさ、この時間のためかもね」

 

満腹になった蚊を逃した。

「ぼくはたった今、あいつに血を分けたでしょ。だからね、勿論あいつもいつかどこかで死ぬけど、それまで、できるだけ悲しい気持ちをしないでほしいって思う」

 

「ね?」

 

目を奪われた。あの子の耳介に掛かった半透明の枝毛。

ゆっくり、丁寧に裂いて、指先に歪に残った小さなそれを、わたしはそっと、ポケットにしまった。

これで、できるだけ悲しい気持ちをしない生涯を、

 

そんな馬鹿な!

あのとき、幼心が、枝毛を裂いたがために?

 

さて、

本当にあの子が女の子だったのか、覚えていない。

そんなことは、心底どうでもよかった。

 

涙は透明な血液なんだって、

 

「ね?」

 

簡単に頷くことはできなかったのね、

時間は永遠じゃないのに、ましてや側に居られる時間なんて限られているのに、
余りにも無責任な気がして、相槌は打てなかった。
代わりに、

「読んでほしい本があるの」

あの子が嬉しそうに下唇を噛んだから、

わたしだけ、たった一人で安心した。

 

まるい地球の隅っこ、何処にある?
わたしはそこで、腕の中でしか泣けないきみを抱き締めながら息がしたいのね、

 

殴られたって、ファム・ファタールは死なない。